第6話 日本初キューティクルニッパーの開発
NFS製品物語
私が初めてキューティクルニッパーの設計をしたのは、今から30年ほど前、以前勤めていたS社にいた頃です。
その当時、今ほど多くの種類の器具は無く、有ったのは、キューティクルプッシャー、キューティクルシザー、ネイルシザー、そしてキューティクルニッパーぐらいでした。
それもすべてが輸入品で、当時プロが使う有名だったブラントは、アントアー、ツゥイーザーマンぐらいでした。
今でも同じかと思いますが、キューティクルニッパーはプロの証、少しぐらい高くても良いものを持ちたいとみんな願ったものです。
当時私は、日本人が設計したネイルニッパーがあってもおかしくない、そう思い、刃物で著名だった、ドイツのゾーリンゲンヘンケル社に話を持ち掛けました。
その当時ヘンケル社はまだ日本ではネイル関連商材は扱っておらず、私の申し出に快諾してくれて、私の設計をもとに共同開発が始まりました。
キューティクルニッパーの開発過程
打ち合わせを重ねるうちに、ヘンケル社はこれからのネイル市場に将来性があると考え、私にヘンケル社への移籍を促してきました。
先方が提示した年俸は当時の私の給料の4倍、魅力はありましたが、当時の上司に対する恩義や、今後のネイル業界のため幅広いジャンルで開発が必要と思っていたため、丁寧にお断りしました。
開発において私がこだわった点は、横から見た刃の角度、日本人の手に合ったコンパクトなハンドル、軽く握れるスプリングの硬さ、ヒンジ部分は、耐久性を考えボックスジョイント、それと一番大事なのが両刃の合わせた時の空隙(楔状空隙の確保)でした。
それらをクリアーするため何度も試作しながら、初めての日本人設計によるドイツ製キューティクルニッパーが完成しました。
その後私の設計を元に歯科医療器具メーカーY社のキューティクルニッパーが完成し、初めての日本製が世に送り出されることになりました、和製ということで、桐箱に収納されたキューティクルニッパーは、プロの心をくすぐる逸品となったことを覚えています。
その後、理美容器具メーカーから精度の高い国産ニッパーが次々に開発され、今では多くのブランドのキューティクルニッパーが、業界をにぎわすことになりました。
S社から独立した私はといえば、専門メーカーに国産高級品は任せることにして、安価な割に品質の良い学校教材用キューティクルニッパーの開発に着手しました。
仕様のこだわりはできるだけ忠実に、パキスタンを訪問して現地に専属工場を作り1,800円代のNFキューティクルニッパーを作り、毎年数千本単位の製品を生徒向けに供給してきました。
キューティクルプッシャー&スクラッパーと共に弊社のヒット商品の一つです。
NFSキューティクルニッパーのこだわり
最後にこだわりの「楔状空隙」について説明したいと思います。
二つの刃を使ってものを切るとき、できるだけ軽い力で効率よく切るには、ちょうどハサミのように切るものに対して一点で刃物が交差する必要があります。
ペンチを使って針金などを切った経験は皆さんあると思いますが、あれは押切で、刃の交差が無く直線で切るため力が必要になります。
【図1】
キューティクルニッパーは、見た目ペンチとよく似ていて押切タイプに思われがち(現に海外の製品にはこのような考え方の製品が多く存在します)ですが、キューティクルニッパーの刃先は繊細で、しなり、ペンチとは全く考え方が違います。
一度弊社のニッパーを軽く握り刃先を合わせて、光のある方向に向けてみてください。
楔状の空隙を見ることが出来ると思います。(図1)それをそのままぐっと力を入れてさらにハンドルを握ってみてください。
その空隙は、ヒンジ側に移動して、最後には空隙は無くなってしまします。
この空隙の移動の際に起きる現象が、点で切れる場所が移動しているということで、ちょうどハサミの点移動と同じ効果が期待できます。
ですからネイリストの皆さんは、キューティクルにあてた刃先は完全に握りしめて空隙が無くなるまで、決してニッパーを引いてはなりません。
途中で引くと、皮膚を無理やり引っ張ることになります。
ティッシュペーパー等を使ってカットの練習をしてみると良くわかると思います。
このような製造のこだわりを知っていただくことは、ネイリストの皆さんの技術向上にもきっと役立つことと思います。
ぜひナチュラルフィールドサプライのニッパーをお試しください!